2010年11月19日、川崎市中原市民館で、武蔵小杉合同法律事務所創立記念トークイベントを開催しました。
事務所の創設にあたり、NHK番組「地球ドキュメントMISSION」でも共演するサヘル・ローズさん、土井香苗さんをお迎えして、「平和と人権」の問題を地域の皆様とご一緒に考え、取り組んでいくべく企画したこの日のイベントに、たくさんの方がご参加くださいました。
総合司会の鈴木弁護士の挨拶から始まったこの日のイベント。まずはトークに先立ち、「angel passe」のみなさんにご演奏頂きました。
angel passeは2009年に結成した女性ユニットで、ヴォ―カルに山元彩さん、チェロに坂井美穂さん、そしてすべての楽曲を手がける、ピアノ上山裕子さんの3人で活動されています。
この日は、イベントにあわせて選んで下さった子どもたちの未来を願う曲や、季節感あふれる抒情的なポップスをしっとりと歌い奏でていただき、会場の皆様も心地よく聞き入っている様子でした。
大きな拍手とともに演奏が終わり、いよいよトークショーです。
穂積弁護士を司会に、サヘルさん、土井さんの息のあったトークが勢いよく始まり、会場は徐々に引き込まれていきます。
まずはお二人が共演されている番組についてご紹介いただきました。
NHK番組「地球ドキュメントMISSION」は、貧困や格差、人権の抑圧、環境、エネルギー、食糧などについて、解決困難と信じられてきたたくさんの課題を解決しようと「ミッション」達成に挑む人々が、立ちはだかる「壁」を突破する試みを、密着ドキュメントで追う、という番組。
世界を変えようとする人たちを紹介する、やりがいのある番組、とお二人は口をそろえます。ぜひ、番組へのご感想なども送ってほしい、とのことでした。
そして、お話はサヘルさんご自身の事へ―
サヘルさんは、「かわいそう、と思ってほしくて話すのではない、ということをわかって欲しい」と前置きをされ、ご著書「戦場から女優へ」にも書かれている、ご自身の戦争孤児としての壮絶な体験を語って下さいました。
4歳の時、イランイラク戦争で家族12人全員を失い、倒壊した家のがれきの中から当時大学生ボランティアとして救援活動を行っていた現在の養母に助け出された―
目の前でお話しされるサヘルさんの存在が、私たちに「それは遠い国の、遠いお話ではない」ことを教えてくれます。
世界的な人権NGOの日本代表として活動されている、土井香苗さんは、少年兵の実態を映像で紹介して下さいました。
行き場を亡くした孤児や、肉親を殺され復讐心をもつ子ども、何事も覚えの早い子どもは、「安い、はやい、うまい」兵力として利用されやすい―。
ヒューマン・ライツ・ウォッチで、この問題に光を当て活動をした結果、子ども兵士を使う国への軍事支援を制限する法律が米国で成立した、といいます。
お二人の話は尽きることなく、サヘルさんの孤児院をつくるという夢と、「オスカー像を獲って母に恩返しする」という夢が語られると、会場からは自然と拍手が湧き起こりました。
最後に、私たちに何ができるか、という問いに対して、お二人から、「知ろうとして欲しい、知ったら、それを発信して欲しい」とメッセージを頂きました。
トークショー終了後は、外国籍女性を支援する団体「カラカサン」の共同代表、山岸素子さんが、日本にいる外国籍の女性の現状についてご紹介してくださいました。
また、ピースボートの合田茂広さんは、この日のangel passeの演奏にちなんで、ベネズエラへ楽器を送るプロジェクトについてお話くださいました。
日の丸・君が代強制反対の裁判原告でもある高校教員の三輪勝美さんは、戦争につながることを見過ごしてはならない、とメッセージを下さり、弁護士の岡田尚さんからも当事務所への激励メッセージを頂きました。
最後に主催者を代表して、神原弁護士が挨拶し、この日のイベントは幕を閉じました。
トーク終了後、サヘルさんのご著書「戦場から女優へ」へのサイン会も行い、長蛇の列となりました。
世界で起きていること、私たちにできることを、地域の皆様と一緒に考える企画にしたい、と事務所を挙げて取り組んで参りましたが、たくさんの皆様のご参加を頂き、また「サヘルさんの生の声に心揺さぶられました。」「もっと世界で起きていることを知りたいと思いました」といったご感想や、当事務所への暖かい励ましのお言葉などを頂き、盛会の内に終えることができました。
お忙しい中、ご出演いただいたサヘル・ローズさん、土井香苗さん、angel passeのみなさん、メッセージを下さった方々、そして、音響・照明を担当してくださったスタッフや、ヒューマン・ライツ・ウォッチのスタッフの皆さん、そしてご参加頂いた皆様に、心より御礼申し上げます。
写真:井出マコト