北海道道議会議員の小野寺まさる氏が、市民に対し、ツイッター上で「公安から聞きましたが鼻血を出しすぎ思考が低下しましたか」等の名誉毀損発言を行いました。
私はその方の代理人として直ちに訴訟を提起し、小野寺氏は、発言を撤回し、謝罪をすることになりました。
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http://www.onoderamasaru.jp/information/%e3%81%8a%e8%a9%ab%e3%81%b3/
小野寺氏の発言がたんなる「侮辱」なのか、事実摘示による「名誉毀損」なのか、評価が分かれるかもしれません。
ただ、どちらであっても、他者の人格を傷つけるものであることに違いなく、さらに、このような発言には一片の公益性もないことからすれば、到底許されるものではありません。
そもそも、公選の議員(選良と言われます)がこのような発言を終始していることが、昨今の、言葉が軽く、他者の人権を省みない風潮を引き起こしているように思います。
そもそもこの議員はこれに限らずアイヌ民族その他に対する差別発言やヘイトスピーチの多い人でも知られており、人権感覚の低い人であったようです。
小野寺議員は、謝罪文の中で、「今後は、第三者を傷つけるような発言は厳に慎むことといたします」と書いていますが、その後の発言をみると、本気で反省しているか、極めて疑問です。
このような人を議員の候補とする政党(=自民党)に最も問題があるように思います。
以下では、本件訴訟の訴状を貼り付けておきます。
東京地方裁判所 民事部 御中
原告代理人弁護士 神原 元(主任)
原告 ○○
被告 小野寺まさる
損害賠償等請求事件
訴訟物の価額 金330万円
貼用印紙額 金2万2000円
第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金330万円及びこれに対する2014年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
2 訴訟費用は、被告の負担とする
との判決及び仮執行の宣言を求める。
第2 請求の原因
1 当事者
(1) 被告は、北海道議会の現職の議員(甲1)であり、以下のツイッター・アカウントを所有している(甲2 以下、これを「本件アカウント」という。)。フォロワーは、本年4月20日の時点で1万4323人である。
@onoderamasaru
(2) 原告は、東京都に居住する一般有権者であり、写真家、音楽評論家である。
2 本件不法行為
(1) 被告は、2014年4月16日午前9時31分、本件アカウントに、生活保護費が職員によって着服された事件の記事(甲4)を引用し、「弱者の仮面を被り、勤勉な国民が納めた税金を詐取する輩は人として最低だ」等とするツイートを書き込んだ(甲3)。
被告の書き込みは、明らかにニュースを誤読し、生活保護の不正受給事件と誤解したものであった。そこで、原告は、同日時44分、「読解力ないんですか。“弱者の仮面を被り”って、不正をしているのは役人で、弱者じゃない」と訂正を申し入れる書き込み(甲5)をツイッター上で行った。
(2) すると、被告は、原告を名指しして、別紙不法行為目録①記載のとおり、「公安から話を聞きましたが鼻血を出しすぎ思考が低下しましたか」(甲6)「相変わらずお馬鹿さんですな?そんなことを言えるとおもいますか?出した鼻血分だけ早く栄養を取りなさい。」(甲11)「○○(原告)君ってまだツイッターに居たのか。公安に拘束され鼻を出しながら弁護士の名前を絶叫する姿を晒され、数々の武勇伝の信憑性は地に落ちた筈。にも拘わらず、偉そうな能書きを宣うとは。哀れにも程がある。」(甲15)などと、原告が2013年6月16日に大久保公園で暴漢に襲われ鼻血を出したことを揶揄する記載をツイッターに書き込むとともに、「こういうのがいるから本当に保護が必要な人に行き渡らないんです。まさに寄生虫。わかったか鼻血デブ○○(原告)!」というツイートを引用して「初めて見ました!」と書き込み、さらに、原告が鼻血を出している写真をネットで公開した(甲9)。
上記一連の記載は、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告は、公安に拘束され鼻血を出しながら弁護士の名前を絶叫する、だらしない男だという事実を摘示するものであるから、原告の社会的評価を低下させるものであって、原告の名誉権を著しく侵害する。
また、この記載は、暴漢に襲われ鼻血を流したという、一般には公開されたくない事実を公開するもので、私生活をみだりに公開されないという利益(プライバシー権)をも侵害するものである。
さらに、無断で撮影された写真を引用する形で公開するとともに、「鼻血を出しすぎ思考が低下しましたか」「相変わらずお馬鹿さんですな?」「出した鼻血分だけ早く栄養を取りなさい。」「公安に拘束され鼻を出しながら弁護士の名前を絶叫する姿」「偉そうな能書き」「哀れにも程がある」等と揶揄を書き込み、さらに、「こういうのがいるから本当に保護が必要な人に行き渡らないんです。まさに寄生虫。わかったか鼻血デブ○○(原告)!」というツイートを引用することは、原告の書き込みに対する反論としても度が過ぎており、原告の名誉感情を著しく侵害することは明白である。
(3) 加えて、被告は、別紙不法行為目録②記載のとおり、原告から「公安があなたにそんなことを言うわけがないでしょ。」(甲6,下段)とのツイートが送られると、「僕は時折永田町一丁目一番地に行っているんですよ?知らなかったですか?6月には委員長殿にも会いますが?」(甲8)「北海道でお待ちしていましたが、『今デモで拘束されたようです。もう用無しですな』との話が北海道でありましたので」(甲10)「一緒にご来道をお待ちしておりましたので…wRT@900dohc:ほう。公安がそんなにベラベラ喋るのか」(甲13)「ははは(笑)貴方が会いに来るって言ったから、どうせなら歓待しましょう…って話をしていただけですが?」(甲14)「どこら辺がとんでもないと?政治家が変な方と会う場合、公安も会いたいってことは多々ありますが?とんでもないことになっているのは貴方の頭の中では?」(甲16)等と、被告が原告と会う場合には公安警察が同行すること、今回は原告がデモで拘束されたので「用無しですな」等と公安警察の要人が発言した等と虚偽の事実をツイッターに記載した。
上記一連の記載は、普通の読者の通常の読み方と注意を基準とすれば、原告が公安警察の監視対象になっており、政治家に会う場合には公安警察が同席しなければならないような「変な人」であるとの事実を摘示する記載であるから、原告の社会的評価を著しく低下させるものであって、原告の名誉権を侵害するものである。
(4) なお、上記のうち、プライバシー侵害をいう部分について、被告から、「原告が事件を起こして逮捕されたことは既に報道されている」「原告がその際鼻血を出した点についてはインターネットで広く知られている」「よって、プライバシー侵害に当たらない」との反論があり得る。
しかし、原告が暴漢に襲われた際、鼻血を出した点は報道されていないし、仮にインターネット等一部の者で知られていたとしても、被告のごとき、県議会議員であり、1万4千人ものフォロアーを持つ者が公開することは、全く意味が異なる。被告の書き込みによって原告のプライバシーが決定的に侵害されたことは明らかであって、被告は免責されない。
(5) 以上のとおり、別紙不法行為目録①記載のツイートは、原告の名誉権、プライバシー権、名誉感情、別紙不法行為目録②載のツイートは、原告の名誉権、名誉感情を違法に侵害するものであるから、いずれの記載も、民法上不法行為と評価され、被告は原告に対し、損害賠償義務を負う。
3 被告の発言に公益性及び公益を図る意図がないこと
(1) 被告は政治家であり、原告は有権者であるから、原告と被告との政治問題を巡る討論の自由はできる限り保障しなければならない。
とりわけ、原告の発言は、「あのニュースには不正受給者の問題にはふれていませんよ」「政治家の方が、誤解を生むようなツイートはどうかと思います」(甲7下段)という記載から明らかなとおり、被告が生活保護費が職員に着服された事件の記事を生活保護の不正受給事件と誤解してツイートを行ったことで、生活保護に対する社会の誤解が広がらないように、という公益を図る目的で発言を行っているのであるから、原告の発言については、高い公益性が認められ、その言動は保護されなければならない。
(2) しかるに、被告は、「あのね、○○(原告)さん。僕は生活保護受給者が悪いとは言っていないのです。止むに止まれぬ場合だってあるはずです」(甲7)との記載から明らかなとおり、原告の指摘の意味に全く気づかず、これを無視した上で、あろうことか、有権者の指摘に対し、「公安から話を聞きましたが鼻血を出しすぎ思考が低下しましたか」「出した鼻血分だけ早く栄養を取りなさい」「公安に拘束され鼻を出しながら弁護士の名前を絶叫する姿を晒され」「偉そうな能書きを宣うとは。哀れにも程がある」等とあらん限りの罵詈雑言を浴びせているのである。
そして、被告は、原告とのやりとりについて、「ははは…。雑談の延長の雑魚話ですが?本来の話を誰がするでしょう?」(甲17)と説明しているから、被告には公益をはかる目的は微塵もなく、真面目に人と会話しようとする意図すらないのである(ちなみに、4月16日は水曜日の平日であり、被告は、公務の勤務時間中にツイッターで「雑談の延長」の「雑魚話」をしていたことになる。被告の議員報酬は税金によって賄われている。)。
(3) よって、被告の言動には、公益性も公益を図る目的もないのであり、なんらかの理由で免責される理由は全くない。
4 損害
原告は、被告の一連の不法行為により、以下の損害を受けた。
(1) 慰謝料 金300万円
原告は、ツイッターへの被告の心ない書き込みによって、名誉権、プライバシー権、名誉感情を著しく侵害され、著しい精神的苦痛を受けた。被告のフォロワーは1万4千人を超え、それらの人々に原告の名誉毀損的記載が晒され、プライバシーが晒されたことを考えれば、慰謝料は上記金額が妥当である。
(2) 弁護士費用 金30万円
原告は、本件提訴のために弁護士に依頼せざるを得ず、上記金額を費やした。
(3) 上記合計 金330万円
5 結論
よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、金330万円及びこれに対する不法行為日である2014年4月16日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求め、本訴に及んだ次第である。
以上