北村教授への誹謗中傷について、東京地裁が加害者に220万円の高額賠償判決を命じました

 イギリス文学者で武蔵大学教授であり、フェミニズム批評で有名な、北村紗衣教授に対する悪質な誹謗中傷について、本日、東京地裁は、加害者に金220万円の高額賠償を命じる判決を下しました。

 この事案では、加害者側がカンパを募ったことが賠償額の増額事由として考慮されています。被害者ではなく加害者がカンパを募る「誹謗中傷ビジネス」に対して、裁判所が歯止めをかけた重要な貴重な判決だと評価してよいと思います。

判決はこちらのリンクからご覧ください↓
東京地方裁判所 令和4年(ワ)第4632号 判決

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北村紗衣先生のコメント

 まずは弁護団の皆様と、傍聴などで支援してくださった皆様に心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。皆様の努力と励ましなしに今回の判決は無かったと思います。

 私はお金が欲しくてこの裁判を行ったのではありません。自分の名誉を守るために、そしてこうした行為が許されてはいけないと思って訴訟を行いました。現在の日本では、ネットで他人に対して誹謗中傷や嫌がらせを行い、被害者から訴訟を起こされるとお金を募って多額の寄付金を集めるという行為が横行し、もはや一種のビジネスモデルと言えるような状態になっています。こうした人々が訴えられて敗訴したとしても、賠償金の金額は通常少額です。名誉毀損を行った当人の手元には、賠償金や裁判費用を払った後も寄付で集めたお金が残ります。訴えた被害者が苦しみに耐えた人生の時間、裁判で戦うために苦労した時間は戻ってきません。訴訟をして判決で勝てたとしても、加害者は結局もうかります。

 一般的にこうした人々は他人の心を傷つけることでお金を稼いでいるわけであって、このようなビジネスモデルを放置しておくことは世の中全体に悪い影響を与えます。そのままにしておくと真似をする人も出るでしょう。今回の判決で、こうした他人を煽ってお金を集める行為が勘案されたのは画期的なことだと思っています。

 今回の判決が、ネットで中傷を受けている方々にとって良い先例となることを祈っております。私は研究職についており、良い協力者の方々にも恵まれ、非常に幸運でした。ネットで中傷を受けている性的マイノリティや民族マイノリティ、アクティビストなどには私よりもっと執拗な攻撃を受けている方がおられます。比較的高額な賠償金や、寄付金集め行為の問題性に言及した判決文が先例となることで、他のもっとひどい中傷を受けている方々が訴訟を有利に進めることができるようになるかもしれません。少しでも中傷を受けて苦しんでいる他の方々の助けになれば幸いです。

 法の場で責任を問うことはできませんが、こうした中傷を面白がってはやしたてる人たち、ゲームに課金するような感覚でお金を寄付する人たちにも道義上の責任があります。あなた方がやっているのは楽しい遊びではなく、他人の人生への悪質な介入です。人を傷つけ、司法を煩わせ、時には人を殺すこともあります。スマートフォンやパソコンの画面の後ろにいるのは生身の人間です。他人の人生をおもちゃにする人々には、法的な責任を問えないとしても、猛省を促したいと思います。

以上